ジブリ『風立ちぬ』 タイトルの意味を解説。原作を無料で読めます! [映画]
本日7月20日、ジブリ映画最新作「風立ちぬ」の一般上映がついに開始されましたね!
私も来週末辺り見に行こうと思っています。
ところで、この映画のタイトル「風立ちぬ」の意味って分かりますか?
たった5文字のタイトルですが、現在では使われていない、「古語」が用いられていますので、ほとんどの方は意味が分かりませんよね。
『風立ちぬ』の「ぬ」は完了の意味で使われています。
つまり、このタイトルの意味だけで言えば、単に「風が吹いた」と言っているだけです。
ですが、このタイトルには堀辰雄自身の決意が込められていました。。
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このタイトルの意味を知るためには、原作の堀辰雄著「風立ちぬ」を読み解かねばなりません。
この作品では、文中で2度、この言葉が登場します。
そのどちらも、主人公がふと思い出した、ある古い詩の一節に含まれています。
―風立ちぬ、いざ生きめやも。―
そして、1度目は物語の冒頭で登場します。
主人公の恋人、節子はその夏、草原で絵を描くのを日課としていて、主人公はいつも側の木陰でそれを見守っていました。
そんなある日、休憩をしていたのか、木陰にて二人で果物を食べていると、急に強い風が吹きます。
そして、それにより節子が描いていた絵が立てかけられている画架が倒れてしまいます。
節子は画架に駆け寄ろうとしますが、主人公がふいに彼女の手を掴んで引き止める、そんなシーンで主人公が前述の詩句をつぶやきます。
この詩句の元ネタは、フランスの詩人バレリーの詩「海辺の墓地」に登場する一節、
「風が起きた。生きようとしなければならない」という意味の原詩で、それを堀辰雄が文語調に翻訳したものだそうです。
風立ちぬ、に続く「いざ生きめやも」とは原詩とは少しニュアンスが異なりますが、「生きようじゃないか」といった意味になります。
実はこのとき節子は結核を患っていて、主人公もそれを知っています。
結核は、環境や食事を改善し、免疫力を高めることで症状が抑えられる事もありますが、当時(1930年代)有効な治療薬のなく、致死率の高い病でした。
言わば節子の「生きる力」に賭けるしかない状況で放ったこの言葉には、主人公の覚悟が反映されていたのでした。
彼女の死の影に怯えながらも、残りの時間を支えあって生きる2人の物語。死ぬことの意味を考えさせられる作品です。
節子のモデルは、堀辰雄の婚約者、矢野綾子だそうです。
彼女も結核を患っていて、堀辰雄と出会った2年後に亡くなっています。
彼女と出会う前に様々な辛い出来事を経験して傷ついていた堀辰雄にとって、彼女との出会いはようやくの「癒し」で、その彼女を失ったことは本当に辛い体験だったでしょう。
そして、堀辰雄自身も長らく結核を患っていて、いつ死ぬとも分からぬ、不安の日々に生きていました。
―風立ちぬ、いざ生きめやも。―
この詩句はきっと、矢野綾子と出会った当時の堀辰雄の心情そのものだったのでしょうね。
なお、堀辰雄著「風立ちぬ」は既に著作権が切れていて、青空文庫で読むことが出来ます。
古い文体なので読むのは少し難しいですが、興味のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか。
堀辰雄著「風立ちぬ」 - 青空文庫
それでは。
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